知っておきたい「薬」関連知識
ここでは薬剤師にかかわる「薬」の知識について、知っておきたいものをご紹介していきたいと思います。
「商品名」と「成分名」
「薬屋さん」で買う大衆薬のパッケージに書いてある名前は「商品名」といいまずが、薬はもう1つ「成分名」という名前をもっているのを知っていましたか。
つまり、成分名が同じなら、商品名が異なるものでも同じ薬ということです。外国の薬でも、成分名がわかれば日本のどの薬と同じなのかがわかります。
たとえば、ファモチジン[成分名]とガスター[商品名]、ラクトミン[成分名]とビオフェルミン[商品名]、ミノキシジル[成分名]とリアップ[商品名]、アセチルサリチル酸(アスピリン)[成分名]とバファリン[商品名]などがあげられます。
「薬屋さん」で買う薬は複数の成分が入っているものが多く、商品名で表され身近に感じられますが、病院で処方せれる薬は1つの薬で1つの成分のものが多く、どんな薬かピンとこないことも多いかと思います。
ときとして、大衆薬と医師の処方薬の成分が同じ場合がありますが、病院では患者の症状に合わせて量や服薬時間が調整され、「みんなの薬(大衆薬)」が「あなただけの薬(処方薬)」になるのです。
医薬品と医薬部外品
薬事法のなかでは、薬のことを「医薬品」といいます。そして、医薬品は次のように定義づけられています。
・日本薬局方に収められているもの
・人または動物の疾病診断、治療または予防に使用されることが目的とされているものであって、器具機械でないもの(医薬部外品を除く)
・人または動物のからだの構造または機能に影響を及ぼすことが目的とされているものであって、器具機械でないもの(医薬部外品および化粧品を除く)
「日本薬局方」とは、日本国内で医療に用いられる医薬品について品質・純度などの基準を定めた公定書で、厚生労働省が医薬品として許可した薬のことを、詳しく収載しているもののことです。
医薬品には、「医療用医薬品」と「一般用医薬品」があります。この2つの違いは、洋服でいうオーダーメイドと既成服にたとえるとわかりやすいかもしれません。
1.医療用医薬品
使用する際に医師または歯科医師の処方せんが必要な薬のことです。一般に作用が強く、個々の患者の体質や症状に合わせて処方された、いわばオーダーメイドの薬です。
医療用医薬品として扱われるのは、麻薬や覚せい剤、毒薬・劇薬、よう指示医薬品など副作用や薬理作用(薬を投与したときに起こる生体内の変化)が強く使用方法が難しいものや、注射剤や放射性医薬品のような、医師が使用するかその指導監督下で使用することが望ましいものなどです。
2.一般用医薬品
医師の処方せんがなくても購入できる薬、一般の人が薬局・ドラッグストアなどで自分の判断で購入できる薬のことです。
一般薬、大衆薬、OTC薬とも呼ばれています。OTC(Over The Drug)とは、薬局・ドラッグストアなどのカウンター越しに買える薬、という意味です。
2007(平成19)年に医薬品の販売制度が改正され、一般医薬品がそのリスクに応じ区分されました。また、購入者への情報提供にも、ランクがつけられました。
・第一類医薬品…特にリスクが高い医薬品(一般医薬品として安全上特に注意を要する成分を含むもの。薬剤師が販売できる)
・第二類医薬品…リスクが比較的高い医薬品(まれに入院相当以上の健康被害が生じる可能性がある成分を含むもの。薬剤師または登録販売者が販売できる)
・第三類医薬品…リスクが比較的低い医薬品(日常生活に支障をきたす程度ではないが、身体の変調・不調が起こるおそれのある成分を含むもの)
3.医薬部外品
医薬品と区別がつけにくいものに、「医薬部外品」があります。医薬部外品は、医薬品ではなく、医薬品に準ずるものです。効果・効能が認められる成分は配合されていますが、医薬品ほど強い作用がないため、効果が必ず現れるというわけではありません。したがって、病気の治療のために用いるのではなく、予防効果を期待して使用するといったものです。
具体的には、薬局やスーパーの化粧品コーナーや衣料品コーナーなどに並んでいる、医薬部外品の表示がされている商品です。
たとえば、薬用歯磨き剤、薬用石けん、制汗スプレー、入浴剤、育毛剤などがあります。医薬部外品は販売業者について特に規制がないので、薬局や医薬品販売業以外でも販売ができるのです。ただ、製造や輸入については医薬品同様に、厚生労働省の承認、許可を得なければなりません。
薬局と医薬品販売業
町を歩いていると、「薬屋さん」には「○○薬局」「○○薬品」「○○ドラッグストア」など、いろいろな名前があることに気づきます。いったい町の「薬屋さん」にはどんな違いがあるのでしょうか。じつは、これはたんに名前が違うというだけではなく、取り扱う薬の範囲などにも違いがあるのです。
医薬品を販売することが認められている業態は、「薬局」と「医薬品販売業」に分けられます。薬局は、「保険薬局」と「薬局」の2つに、医薬品販売業は、「店舗販売業」と「配置販売業」の2つに分類されます。
●薬局
薬局のうち「保険薬局」は、前にも述べたように薬剤師が健康保険を扱って調剤すること(保険調剤)ができる薬局です。「保険薬局」「処方せん取り扱い」などの表示があります。また、対象薬の販売も行っています。一方、「薬局」では、薬の調剤と大衆薬の販売ができます。ただし、保管調剤は行うことができません。
薬局には次のようなことが義務づけられています。
1.管理薬剤師を置くこと
管理薬剤師とは特別資格などを必要とするものではなく、薬剤師の立場から店舗を管理し、従業員の指導教育などを行う人のことをいいます。
2.次の2つのうち、多いほうの人数の薬剤師を置くこと
・1日平均取り扱い処方せんが40枚までは1人、以後40枚または端数を増やすごとに1人追加
・1ヶ月平均販売高が800万円または端数を増やすごとに1人追加
3.6.6㎡以上の調剤室を儲けること
調剤室については、広さのほか、天井や床は、板張り、コンクリートまたはこれらに準じるものと決められています。
また、薬局の中で「基準薬局」という表示が出ているのを目にした人もいるかと思います。基準薬局とは日本薬剤師会が導入した制度で、地域の医療・福祉に貢献するための業務を積極的に行っている薬局を基準薬局として認定するものです。
認定にあたっては、適正な調剤・薬歴管理を行っている、ファクシミリ・待合室などの設備がある、休日・夜間の対応を行っている、研修会・講習会に積極的に参加しているなど、一定の基準をクリアすることが必要です。この制度は、かかりつけ薬局を選ぶ際の目安として利用されています。
●医薬品販売業
では、医薬品販売業とはどんな業態をいうのでしょうか。次のような2つに分類されています。
1.店舗販売業
配置される専門家として、薬剤師または登録販売者が必要です。薬剤師が配置されていれば第一類医薬品から第三類医薬品まで一般用医薬品(485成分)はすべて販売できますが、登録販売者のみの配置では、第一類医薬品は販売できす、第二類医薬品と第三類医薬品(474成分)が販売できます。調剤室は必要ありません。
2.配置販売業
いわゆる置き薬の訪問販売の様なもので、配置員が各家庭を訪問し、顧客が選んだ薬を薬箱に入れて置いていきます。そして、年に数回配置員が訪れ、使用した分だけの薬代金を徴収し、薬の補充などを行うというシステムになっています。
配置販売業者は店舗販売をできない、逆に薬局・薬店などは訪問販売をできないという取り決めになっています。配置販売業者となるには都道府県知事に申請し許可を得たうえで、指定された医薬品のみを取り扱うことになります。
以上をまとめてみると、次のようになります。
・薬局には「保険薬局」と「薬局」があり、どちらでも調剤業務は行えるが、保険調剤を行えるのは保険薬局のみ。
・医薬品販売業は「店舗販売業」と「配置販売業」の2つに分けられる。
・調剤ができるのは薬局だけ。
薬剤関係の法律
今まで述べてきたことから、薬はその性質上、取り扱いに専門的知識と厳重な注意を要するものだということが理解できたことでしょう。薬は人のからだに影響を与える化学物質です。病気を治すだけでなく、ときには重い副作用を起こすこともあり、決して軽々しく取り扱うことはできません。
薬の誤用や不適切な使用を防ぎ、私たちが安全に薬を使用できるように、薬剤師や薬局には法律上さまざまな厳しい取り決めがなされています。
薬剤師と薬局にかかわる法律は、おもに薬剤師法と薬事法です。
●薬剤師法
薬剤師の身分や業務内容などについて定めた法律です。第1条にこの法律の目的と精神が表されています。
第1条=薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものである。
●薬事法
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療用具に関する事項を定めた法律です。薬局や医薬品販売業、医薬品製造業などについても細かく規定されています。
第1条=この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うとともに、医療上特にその必要性が高い医薬品及び医療用具の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保険衛星の向上を図ることを目的とする。
そのほか、薬剤師にかかわる法律には、毒薬及び劇物取締法(毒劇法)、あへん法、覚せい剤取締法、大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締法、麻薬特例法などがあります。